低脊通電 学会発表

注)

「低周波脊髄通電法」は「せきずい活性法」の原型となった療法であり原理は全く同じです。しかし「せきずい活性法」は当時の研究を更におし進め応用することに成功しています。当時では治癒が難しかった症例に対しても現在では驚くほど改善を示している例も数多く存在します。ここで紹介している論文については、あくまでも当時の研究であるとご理解下さい。


1)運動麻痺 A.脊髄性小児麻痺
2)知覚障害 B.脳性小児麻痺
3)言語障害
* 現在の自律神経疾患
5)精神症状

        

1)〜5)=東京大学医学部第一内科 田坂定孝教授 1957年 『-総説- 低周波脊髄通電法』
    (低周波医学、1:5〜11)より一部抜粋

A.B.=東京医科歯科大学小児科学教室 主任太田教授  上芝幸雄・岡野英子・森川龍太郎
    1958年『脊髄性小児麻痺並びに脳性小児麻痺に対する低周波直角脈波脊髄通電療法』
   (低周波医学、1:67〜71)より一部抜粋


★文中の低脊通電とは低周波脊髄通電法のことです

《臨床成績》

1)運動麻痺(184例)

 ・脊髄通電は軽度の運動麻痺を全治させることもまれではなく、高度の運動麻痺でもかな
  りの程度まで改善させる。

 ・四肢に限らず顔面筋や躯幹筋の麻痺にも有効である。

 ・一般に四肢の麻痺よりは躯幹筋麻痺の方が改善されやすく、また上肢よりは下肢の方が
  治りやすい。

 ・運動麻痺6ヶ月以内のものは全てに効果が現れた。

 ・数年間も固定状態にあったものでも改善が見られ、全治するものまである。

 ・上肢では無効26%,有効56%,著効18%。

 ・手指では無効25%,有効61%,著効14%。

 ・下肢では無効13%,有効65%,著効22%。

2)知覚障害(89例)

 ・電気治療は神経痛や異常知覚の治療に用いられてきたが、知覚鈍麻・麻痺に対する効果
  はほとんど認められていなかった。ところが低脊通電では知覚鈍麻・麻痺に対して卓効
  があることが認められ、しかも15〜20分くらいで効果が現れることが多い。

 ・軽度の症状はたちまち完治することもまれでなく、高度の知覚麻痺でも数回の通電で大
  なり小なりの改善が見られることが多い。

 ・脊髄通電は知覚神経系の活動神経線維を増加させ、伝導機能を高めるものと考えられる。

 ・脊髄通電によって部位に不鮮明な深部痛が誘発または憎悪されることがあるが、これは
  脊髄通電によるさまざまな生体反応の総合結果によるものと考えられ、通電の反復によ
  って約2週間前後で著しく減少または消失するので、この疼痛のために中断 することな
  く、むしろ鎮静剤を投与しながらでも通電を続けるべきである。(好転反応

 ・全体としては無効25%,全治14%。

 ・触覚では無効24.5%,全治23.6%。

 ・痛覚では無効23.5%,全治18.9%。

 ・冷覚では無効38.5%,全治20.0%。

 ・温覚では無効42.8%,全治17.0%。

 ・深部知覚では無効57%,全治15%。

 ・異常知覚では無効31%,全治20%。

 ・疼痛では無効17%,全治45%。

3)言語障害

 ・片麻痺にみられる言語障害に効果がある。

 ・原因がはっきりわからない患者の方が治癒率が高い。

 ・治癒率は言語不明瞭43%,吃音53%,高音不能または音量不足50%,言語易疲労性50%。
  小脳性疾患にみられる緩徐言語,断綴言語、パ−キンソン氏病に見られる単調な緩徐言語
  にはほとんど効果がみられない。

4)中枢性神経疾患 

 ・自律神経障害による諸症状に有効である。

 ・皮膚の冷感に44%の改善効果で、多くは5〜20回の通電で消失ないし著減。

 ・手背、足背の浮腫に65.5%の改善効果で、6ヶ月も続いた手背の浮腫がたった1回の通電で
  改善した例もある。

 ・発汗過多は43.5%、唾液過多は71.4%。

 ・皮膚の乾燥や萎縮、毛や爪の発育障害にも有効。

5)精神症状

 ・従来精神障害に対しては電気治療はただ暗示療法に過ぎないとされていたのに反し、運
  動障害の改善目的で通電していた本人または家人から精神症状の改善が多数報告された
  ことから、暗示ではなく通電によって脳に直接影響を与えた結果精神症状が改善してい
  ると考えられる。

 ・頭重,眩暈,逆上感,不眠,耳鳴,精神的疲労性亢進,健忘,感情刺激性,抑鬱,記名
  了解・計算・判断力等の減退等の改善が見られる。

 ・感情障害は74%,頭重は70%,睡眠障害にも卓効があった。

 ・精神症状の改善は、本通電によって脳波に変化が起こり、かつ脳の酸素消費量が影響を
  受けること、あるいは大脳皮質や脳幹の温度が変化することなどにより、直接的に影響
  を 及ぼしていることが考えられる。 

A.脊髄性小児麻痺
1)通電対象
  昭和30年10月〜昭和32年8月まで東京医科歯科大学病院及び緑成会多摩補導所整育園に
  収容中の脊髄性小児麻痺患者23例。

2)通電法法
  ・通電箇所は田坂教授と同様、プラスを項部、マイナスを仙骨部(下方通電)

  ・時には症状に応じて逆の上方通電を行った。

  ・出力は痛みを感じない最大限まで上げる。

  ・通電時間は40分間。通電開始時と停止時は2〜3分かけて徐々に出力を増減させた。

  ・患者はあお向けまたは抱きかかえる形で通電。

  ・週2〜3回実施。新鮮型で4〜43回、陳旧型で28〜30回通電した。

  ・一部の患者にはビタミンB1の脊髄注射およびマッサージを併用した。

3)通電による臨床効果判定
  ・完全に病前の機能に回復=全治、病前の機能にきわめて近く回復=略治、機能障害は
   残るが明らかに好転=軽快、治療前と変わらぬ=不変。

  ・症状は軽症、中等症、重症に分類して観察。

  ・新鮮型17例において全治〜軽快は16例(有効率94%)、陳旧型6例において
   全治〜軽快は2例(有効率 33%)

○症例10・新鮮型症例
  ・5年8ヶ月の女児。満期安産。

  ・昭和31年10月18日明け方背中の痛みを訴える。

  ・夕刻より38度の発熱、一時39度に上り、頭痛を訴える。21日朝より下熱。

  ・22日朝に左上肢の麻痺に気づき、25日に入院。

  ・入院時所見:体温36度、左上肢の拳上運動は、ほとんど不能、前腕の回内・回外運動は
   やや可能、手指屈伸運動は可能、肘関節屈伸運動はほとんど不能の状態。

  ・第8病日より腰椎穿刺(週2回、ビタミンB1及びグルシン注入)及びマッサージを行うと
   ともに、低脊通電を週2〜3回実施。

  ・3回目より左上肢がかなり動くようになる

  ・9回目より側方から水平位まで拳上可能となる。

  ・17回目より歩行時に左肩が下がらず、左上肢を垂直位まで拳上できるようになる。

  ・25回目より日常生活にほとんど差しつかえなくなり病前の機能にまでほとんど回復した。

○症例13・新鮮型症例
  ・1歳2ヶ月の女児。満期安産。

  ・昭和32年7月2日に突然発熱、40度が4日続く。

  ・3日目に起立不能なのに気づき、6日後に腰部及び下肢に痛みを訴える。

  ・7月8日某病院にて脊髄性小児麻痺と診断され腰椎穿刺による治療、マッサージ治療を受
   けたが少しも改善の兆候見られず(約4週間)。

  ・7月26日(第25病日)当院を訪れ、27日入院。

  ・入院時所見:両上肢正常、両下肢弛緩性麻痺、座位、起立位ともの不能、歩行不能、尖
   足位をきたす。膝蓋腱反射は両側とも微弱。両側にバビンスキー反射認める。

  ・第29病日より低脊通電の単独療法を開始。週2〜3回通電。

  ・3回目より座位可能、つかまり立ち可能。

  ・4回目よりつたい歩き、はいはい可能。

  ・8回目より椅子に一人で座れる。

  ・9回目より一人立ち可能。

  ・12回目より片手をつなぐとよちよち歩きができる、引き続き治療中。

○症例23・陳旧型症例
  ・16年10ヶ月の男児。

  ・2歳の時脊髄小児麻痺にかかり、左上肢および両下肢の弛緩性麻痺を残し、その後某大学
   の整形外科に数年通院治療。

  ・7〜8歳のころは松葉杖で歩行できたが、その後再び歩行不能。

  ・16歳5ヶ月に多摩補導所整育園に入所、機能訓練およびマッサージ治療。

  ・昭和31年9月より低脊通電を開始。週2〜3回通電。

  ・開始前は松葉杖でかろうじて立てる程度で左上肢、両下肢にかなりの筋の萎縮を認める。

  ・10回目より両足先が温まるようになる。

  ・15回目より左上肢の力が出て、腰に力が入るようになり、自分の身体を支える力が出てきた。



B.脳性小児麻痺
1)通電対象
  昭和30年10月〜昭和32年8月まで東京医科歯科大学病院及び緑成会多摩補導所整育園に
  収容中の脳性小児麻痺患者18例。先天性15例、後天性3例。

2)通電法法
  A.とまったくおなじ。先天性群において6〜41回、後天性群において35〜72回。

3)通電による臨床効果判定
  ・症状を5つに分け、通電によって治療前の機能が2つ以上軽快したものを有効、それ以下を
   無効とした。

  ・5つの症状はそれぞれ、筋力増大し運動の良くなったもの、発語円滑になったもの、治療前
   不能の動作の可能になったもの、顔貌の改善、反射亢進状態の軽快。

  ・先天性群15例では有効9例(有効率60%)、後天性群3例では有効3例(有効率100%)。

  ・神経の器質的変化を有する脳性小児麻痺を完全に治癒させることは不可能とはいえ、そ
   れに対する治療法がない中、低脊通電によってある程度有効な例のあることは、患児の
   将来に光明を与えるものと信ずる。


○症例8・先天性例
  ・2年2ヶ月の男児。先天性脳性小児麻痺。満期安産。生下時体重3000g。

  ・頭部固定は18ヶ月で正常児より遅く、手足が少し硬くぎこちなかった。 

  ・2年経ってもやっと座れる程度。

  ・昭和31年6月29日来院。座る事は可能であったが、四肢の痙性麻痺のため起立、歩行とも
   にまったく不能。

  ・ただちに低脊通電を週2〜3回実施。

  ・6回目より腰がしっかりする。

  ・8回目よりつかまり立ち可能、2、3歩歩行可能。

  ・25回目より歩行中に方向転換可能。

  ・27回目より手指の各個屈伸運動可能。

  ・37回目よりアマイ、ポツポと言える。

  ・39回目より歩行は非常に上手になり、両親も非常に驚いていた。

○症例17
  ・1年10ヶ月の女児。

  ・昭和29年12月14日発熱痙攣を持って日本脳炎発病、翌日15日より右半身不随。

  ・昭和30年1月9日に当院を訪れる。当時起立不能、歩行不能、右上肢は痙性麻痺のため拳上
   ほとんど不能。

  ・1月24日(第42病日)より週2〜3回低脊通電を開始。

  ・5回目よりつかまり歩き5〜6歩。

  ・13回目より右手で口まで持っていく、右手で物を把握する。

  ・14回目より右上肢を水平位まで拳上可能。

  ・18回目より右手の指の爪がそれまで伸びなかったのが伸び始める。

  ・25回目より右上肢を垂直位まで拳上しうるようになる。




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